自分を主語にせず、相手の目線でゴールを見る──事業部メンバーが考える、「ギフティらしい」協業のかたち
飲食や流通、小売業界を中心に、SaaSを使いeギフトを生成できる「eGift System」を提供しているギフティ。それらのクライアントを「コンテンツパートナー(以下、CP)」とし、中でも仕組みの提供だけでなく、協業案件などを進めているのが、入社3年目の伊藤なつ海さんです。
以前は銀行員として、企業への融資に携わってきた伊藤さんですが、縁あってギフティに入社。出資先であるパンフォーユー社と協業して立ち上げた、パン業界の新たなeギフト「全国パン共通券」が評価されるなどし、昨年「ギフティアワード2021」に選ばれました。
「“向き合う”ではなく、“相手の目線に立つ”」
このことを意識し、ときに現場に足を運び自分の目で見るなどし、常にクライアントの立場に立つよう心掛けている伊藤さん。その際の心構えや、今後のビジョンなどについて語ってもらいました。
〈プロフィール 伊藤 なつ海(いとう なつみ)〉
慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、新卒で三井住友銀行に入社。その後、縁あって2020年5月にギフティにジョインし、現在では出資先との協業案件、eGift Systemを活用した仕組みづくりに取り組んでいる。
「お客さんのために働きたい」ギフティの姿勢に惹かれた
──伊藤さんは現在、主に出資先との協業案件、新たな仕組みづくりなどを担当されているとのことですが、具体的にはどのようなことをやっているのでしょうか。
ギフティではCPさんを担当するチームを、eGift Systemをこれから導入提案する「新規開拓チーム」と、すでに導入しているCPさんをサポートする「CSチーム」に分けています。
私は入社して1年ほどは、CSチームに所属していて、eギフトの流通額を上げていくためのサポートに加え、CPさんが困っていること、やりたいこと、それをどうやったらギフティで実現できるか、などを考えていくのがメインの役割でした。
2021年ころからは、ギフティがベンチャー企業に出資を行う機会が増えてきまして。その流れで、各社との協業案件を進めたり、引き続きCPさんのサポートを多方面からできるようなサービス(プロダクト)の提供を進めたりする部署が立ち上がりました。
現在はその部署で、協業先と一緒に新しいジャンルのeギフトを作ることを考えたり、eギフトの幅を広げられるような仕組みづくりをしたりと、一歩踏み込んだ取り組みをしています。
その中のひとつとして、地域のパン屋さんの課題解決をミッションとしているパンフォーユーさんと協業することになり、「全国パン共通券」というものが生まれました。
共通券の加盟店にて、好きな商品と引き換えることができるeギフトで、会計の際に店舗に設置されている2次元コードを読み込んで利用できる、という仕組みです。
これまでお米の共通券や卵の共通券はあったんですけど、じつはパンの共通券というものはなくて。パン業界のプラットフォーマーになり、業界全体を盛り上げていきたいパンフォーユーさんと、パンという新しいマーケットの開拓、新しいギフトの形を作っていきたいギフティの想いが一致したかたちです。
リリースを受けて、「お花の共通券をつくってみたい」といったご連絡もいただいたり、好評で。このようにシステムを提供するだけでなく、一緒に新たな枠組みを作り上げたりするのが、私の役割になります。
──入社間もないのに、すばらしい活躍ですね。そもそも銀行からの転職とのことですが、どのような流れだったのですか。
当時、たまたま顧客としてギフティを担当していて、その中で、CPとなりうる企業さんを紹介していたんです。その関係で、ギフティの社員が、実際に営業を行う現場に立ち会うことも多くて。
率直に、いい会社だなと思ったんですよね。事業内容はもちろん、とにかく人がいい。自分たちのサービスが好きだという想いが伝わるし、それが提案先にとっても良いものであるとちゃんと説明していた。自分たちの都合だけでなく、相手のことも考え、同じ目線に立っている。相手は何を考えていて、何を課題としているのかというところまでしっかり考えられていて、素敵だなと。
こういった姿勢が、当時「お客さまのために仕事をしたい、世の中により良いサービス、誰もが幸せになれるサービスを提供していきたい」と考えていた私に、すごく響いたんです。そうした折に、当時のギフティメンバーから「転職を考えているなら、うちに来れば」とお声かけいただきました。
私が入社したあと、その方に「何で誘ってくれたんですか?」と聞いたんです。そうしたら「『お客さんのために働きたい』と本気で思ってる」「(行員としての)ギフティに対しての接し方も、すごくそれを感じて。ギフティがクライアントに相対するときも、そういう姿勢がすごい大事だから」と言われたんです。
だからいまでも、“相手の目線に立つ”というのは、仕事をしていくうえで、とくに意識していることでもあります。
群馬のパン屋を自転車で回った。見えてきたリアルな背景
──“向き合う”と“相手の目線に立つ”では、具体的にどのように違うのでしょうか。
“向き合う”というのは、あくまで自分視点で相手を見ることで、“目線に立つ”というのは、言葉どおり、相手が持つ背景にまで思いや考えを巡らせることだと思っています。
ギフティとクライアントで、それぞれ違うマーケットを見ているはずで、当然ユーザーが違うことも多い。まったく別の背景があり、目標やミッションがあるのに、そこを無視して利害の一致だけを考えてしまうと、本当の意味で分かり合えない気がするんです。
お互いが求めていること、その根底にあるものを理解し合えていなければ、どれだけ具体的なレベルで話し合っても、どこかでズレが出たり、一時的な結果に終わったりしてしまう。お互いの出来ることベースの話になることも多く、本当の意味での新しいサービスは生まれないのかなと。
ギフティとクライアントだけが満足するものではなく、それによってもっと広く、ユーザーや社会にしっかりと影響を与えられるものをつくっていきたいんです。そのためには、ちゃんと向こうの全体像を理解して、こちらの背景も伝えて、もっとマクロなレベルでマッチングしたいなと。
たとえば「全国パン共通券」ですと、パンフォーユーさんは、パンのプラットフォーマーになること、パン業界全体を盛り上げていくことを、ギフティはeギフト市場を広げていくことをそれぞれ目標にしていて、これだけで捉えると目指すべきところが決まっていくように思えますが、まだこの時点では“向き合っている”にすぎなかった。
もっと背景を探っていくと、いろんなことが分かってくる。実際パン屋は全国に1万店舗以上あり、個人経営の店も多い。その中には、そもそもeギフトというものに馴染みがない店がたくさんあって、いきなり広めようとしても難しい。もっとパン業界、個人経営の店の目線に立って、彼らが目指している先、その中でのeギフトの必要性などを、しっかりと考えていく必要が出てきた。
そういうこともあって、パンフォーユーの社長さんとシステム責任者と3人で、そのパンフォーユーさんが拠点を置く群馬県のパン屋さんを実際に見て回ったんです。
パン屋さんと社長さんの会話を聞いたり、移動中に他愛もない会話をしたりする中で、彼らが本当に何をしたいのか、eギフトというものの認知度は実際どれくらいなのか、など実情や温度感みたいなものが見えてきた。そこからまた、事業についていろいろと考え直して。
いきなり全てのパン屋さんを対象に行うのではなく、まずは大手チェーンさんなどを中心に声かけしていき、全体的に認知されたところで、個人経営のお店さんなどに広げていく、ということになったんです。これは、“向き合う”だけでは難しかったなと思います。
社員にはなれないけど、社員のひとりとして認識されるくらいまで、クライアントさんの中に入って行きたい。嬉しかったのは、後日その社長さんから「伊藤さんには、うちの会社に出向してほしいくらい頑張っていただいた」と言われたこと。そのくらいの関係値を築くことがもうひとつの裏目標でもあったので、本当に嬉しかったです。
求められるのは「自分だけを主語にせず考えられる人」
──そのような経緯があって「全国パン共通券」が生まれたんですね。リリースされたのはいつ頃なんですか?
去年の12月です。リリースされたこと自体に達成感は覚えましたが、そこで終わりではなく、あくまでステップのひとつで。
共通券が売れて、パン業界、地域のパン屋さんが少しでも盛り上がって、それによってeギフトの認知度が高まって、初めて成功と言える。プレッシャーは感じますし、しっかりとインパクトを残していかないとなと思います。
最終的なゴールとしても、もっと先を見ていきたいんですよね。いままでは、とにかくeギフトの流通額を増やすことをひとつの目的としていたんですけど、今回のパン共通券は、そこを飛び越えていて。特定のパン屋のお客さんを増やすだけではなく、パンを食べてくれる人自体を増やすとか、パン業界全体の消費量を増やすとか、そういうところが本当のゴールになってるんです。
──最後に、今後ギフティにはどんなメンバーが入ってほしいですか。
「自分だけを主語にせず考えられる人」です。クライアントと相対する際に、ちゃんとマクロな視点に立って、相手のマーケットのことまで考えられる人がいいかなと。お互いが持っている背景は違うんだけど、同じ取り組みをやって、それぞれの目標を達成しましょうね、と思いやりを持って考えられる人がいいと思います。
それは対クライアントだけではなくて、社内でもそう。ギフティでは、部署の垣根を超えて一緒に考えてくれる人が多いし、当事者意識を持って同じ目線に立ってくれる人が多い。そういう方と一緒に働けるのを楽しみにしています。
(取材・文・撮影・編集:清水 翔太)