BACK
|ギフティの人

プロダクト開発の魅力は「コンセプトの実装」──ギフティの新卒メンバーが、会社を支えるプロダクト責任者になるまでの軌跡

「新プロダクトの立ち上げを任せたいから、来週までに事業計画書を持ってきて」──ギフティに新卒一期生として入社した篠塚大樹が、入社して5ヶ月目に、代表取締役の鈴木達哉に突然呼び出されて言われたことばです。

「事業計画書って何?」といったレベルから篠塚が立ち上げた『giftee campaign platform』は、いまやギフティの中核事業。篠塚は現在、『giftee campaign platform』を含む、BtoBプラットフォーム『giftee for Business』のプロダクト責任者を務めています。「僕は野に放たれているんです(笑)」と楽しそうに語る姿からは、ギフティの自由なBizDev環境が見えてきました。

<プロフィール:篠塚 大樹(しのづか だいき)>

慶應義塾大学総合政策学部卒業後、2017年4月に株式会社ギフティに入社。Business Development Divにて地域通貨ソリューションの導入推進や横浜DeNAベイスターズとの協業推進に従事した後、2017年にgiftee campaign platform事業部を設立。現在は『giftee for Business』ユニットの責任者として法人向けプロダクトの企画・開発をしている。

新卒5ヶ月目、いきなりの抜擢

──まず、篠塚さんが現在担っているミッションを教えていただけますか?

自社商品をeギフト化したい企業と、eギフトを使ったキャンペーンを展開したい企業をつなぐBtoBプラットフォーム『giftee for Business』のプロダクト責任者を務めています。現在のチームメンバーは、エンジニアが10人です。

──入社直後に新プロダクトの立ち上げを任されたそうですね。

はい。『giftee for Business』の一機能である『giftee campaign platform』の立ち上げを主導しました。これはデジタルキャンペーンを実施するための法人向けプラットフォームで、Twitterキャンペーン、アンケートから、来店認証、インスタントウィン(※)まで、さまざまなラインナップが揃っています。

(※)インスタントウィン……フォロー&RTなどの条件を満たすと、リアルタイムに当落結果が表示され、当選者にはその場で特典が付与される仕組み。

始まりは新卒1年目の8月、終業後にオフィス近くの飲食店で、坦々麺を食べていたときのことでした(笑)。代表取締役の鈴木達哉から急遽、役員会議に呼び出されまして。「明日からこの事業の立ち上げを任せるから。まずは来週、事業計画書持ってきて」と言われたんです。

──えっ。新卒入社から5ヶ月目で、いきなりですか……?

はい(笑)。当時は「事業計画書って何?」といったレベルだったんですよ。なんとか形にして持っていっても、「こんなの事業計画書じゃない」と一蹴されましたし……。何をすればいいのか全くわからなかったので、不安でした。

でも、ワクワクする気持ちも大きく、「とりあえず動くしかない!」と行動を重ねていきました。社内メンバーや鈴木の力を借りながら、なんとか事業計画書を仕上げる。エンジニアと一緒にお客様へのヒアリングを重ね、プロダクトを小さく形にしていく。リードがまったくない状態から、テレアポや社内の人脈を活用しながらアポイントメントを取り付け、毎日何社も話をしに行く。20社ほどあったTwitterの認定代理店は、ほぼ全部回りましたね。そうして試行錯誤した結果、鈴木に声をかけられてから2ヶ月後には、MVP(実用最小限の製品:Minimum Viable Product)が形になり、運用フェーズに乗せることができました。

──実際にプロダクトを立ち上げていく際には、どのような点に気をつけていましたか?

最初は「とにかくお客さんに会いに行く」ことしか決めていませんでした。でも話を聞いていくうちに少しずつ、マーケットやお客様の課題感に対する理解が深まってきて。ギフティがどういったポジションで、どんなサービスを提供すべきか、だんだんと見えてきました。

とはいえ、ヒアリングの方法はかなり試行錯誤しましたね。ヒアリングでどのくらい意味のある情報を聞き出せるかは、聞き手の出方次第。マーケットや顧客に対する解像度が低い段階では、「何に困っているのでしょう?」「こんなプロダクトがあったらどうですか?」といった曖昧な質問しかできず、なかなか有益な情報は得られません。

でも、マーケットや顧客への理解が深まっていくと、「いまここにお金がかかってると思うのですが、御社の予算ではどの財布から出てるのでしょう?」「このツールにこうした機能があると思うのですが、使っていますか?」と切り込んでいけるようになり、さらに深い情報を得られるようになりました。“仮説の精度”の大切を知ったんです。

ネガティブなフィードバックも面白い。プロダクト開発に惹かれる理由

──そうして立ち上げられた『giftee campaign platform』は、現在までどのくらい成長したのでしょう?

ギフティで最も利益率の高いプロダクトになりました。全社の売り上げの7割ほどを『giftee for Business』が占めているのですが、その半分以上が『giftee Campaign Platform』によるものです。

導入先が増えるほど、利益も増える仕組みとなっている点が、『giftee campaign platform』の強みです。受注金額が伸びても、比例してインフラの費用がかさんでしまわないように意識して、プロダクトを設計しました。たとえば、「Twitterキャンペーン」「LINEキャンペーン」「アンケート謝礼」「抽選キャンペーン」といったさまざまな機能を、クライアントごとにカスタマイズして提供するのではなく、どの事業者でも汎用的に使えるような仕様にしています。

──いまやギフティの生命線の一つでもあるプロダクトなのですね。篠塚さんはプロダクト責任者として、どのくらいの裁量権を持っているのでしょうか?

中長期的な戦略だけ、鈴木をはじめとした経営陣とすり合わせ、あとは基本的に自由にやらせてもらっています。立ち上げ期でも月一で状況報告をするくらいで、売り上げが立つようになってからはあまり相談していません。

いわば、僕は野に放たれているので(笑)。明確な上司がいるわけではなく、いつも"野良"といった感じです。でも、自由にやらせてもらったほうが好きですね。もちろん上司と二人三脚で動いている人もギフティにはいますが、僕にはいまのスタイルが合っていると思います。

──プロダクト開発の面白さは、どのような点に感じていますか?

頭の中にあったアイデアを形にして世の中に出し、それに対してフィードバックを得られる点ですね。僕は、「このマーケットで、ギフティのリソースやアセットにこんなプロダクトの掛け算をしたら、こんな風に使ってもらえるんじゃないか」といった仮説から、プロダクト立ち上げをスタートすることが多い。その仮説が検証されて形になっていくプロセスに、楽しさを感じるんです。もちろんクライアント企業やエンドユーザーから感謝してもらえるのも嬉しいですが、「この機能使えないよ」といった指摘もまた面白いなと感じます。

──ネガティブなフィードバックでも、「面白い」と感じるのですね。

フィードバックによって仮説がより磨き上げられ、マーケットや顧客に対する理解が深まりますから。

加えて、規約や申込書の作成、円滑な社内オペレーションの整備も含めた、トータルの仕組みづくりにも面白さを感じます。アイデアを考えることも好きですが、それ以上に、「アイデアをどう形に落とし込んでいくか」に興味があるんです。泥臭い面、しんどい面も含めて、コンセプトをいかに実装していくか。それも、プロダクト開発の大きな魅力です。

「人生で一番悩んだ」内定していた会社を断り、ギフティに新卒入社

──ギフティに入社するまでの経緯についても教えていただけますか?

もともと、「なんでもやれそうだな」という理由で、慶應義塾大学総合政策学部(以下、SFC)に入りました。小さい頃から、飽き性なんです。歴史に興味が沸いて集中して調べて、飽きて、今度は宇宙に関心を持って一気に調べて、飽きて……といった小学生だったので(笑)。小学校から高校まで続けていた野球以外は、好きなことであっても、興味が長く続いた試しがありませんでした。

ですから、好奇心を原動力に、興味の赴くまま、さまざまなことに手を出していくのが、自分には合っているのかなと。一つのことを突き詰めるよりも、いろんなことの掛け算をで価値を発揮する人を目指した方がいいなと思い、幅広く学べるSFCに入りました。

──大学時代にデザイナーとしてギフティのインターンに参加したそうですが、もともとはデザインに興味があったのでしょうか?

そうなんです。大学3年生でオーストラリア留学に行ったときに、英語が全然喋れず、ディスカッションでもまったく価値を発揮できなくて。だからこそ、逆に「言語に頼らずとも、なにかを形にしてアウトプットできる人は強い」と感じるようになり、独学でデザインを学びはじめました。帰国後、医療ベンチャーのメドレーで半年間インターンした後、ギフティにジョイン。インターンとして、半年間、アニメーションやバナー、UIをつくっていました。

ただ、デザイナーになりたかったわけではないんです。興味があったのは事業づくりでした。でも、事業づくりに関わる複数の立場をある程度深く理解していたほうが、実際に事業をつくるときにも強いのではないかと思いまして。僕が興味のあったWebサービスをつくるときにデザインは不可欠なので、一度しっかり学んでおきたいと考えたんです。

──インターンから新卒入社へと至ったプロセスについても、教えていただけますか?

僕がインターンでギフティに入った大学4年の秋頃は、ちょうど『giftee for Business』が本格展開されはじめた時期でした。『giftee for Business』のWebサイトを制作するプロジェクトにアサインされ、そのビジネスモデルを聞いたときに、学生ながら「きっとこれは伸びるだろうな」と思いました。なにか明確なロジックがあったわけではないのですが、感覚的にそう思ったんです。

その後インターンを始めて2、3ヶ月経った頃、鈴木に入社を誘われたのですが、別のデザインファームから内定をもらっていたので、一度は断りました。でも、ギフティの成長を間近で見ているうちに、「ここにいた方が面白いんじゃないか」という考えが抑えられなくなってきて……。また、先ほどお伝えしたように、最終的にはデザインではなく事業づくりを手がけたかったので、この魅力的なビジネスをBizDevとして伸ばしていきたい気持ちも湧いてきました。

大学卒業の直前である2017年3月、「ギフティに入るなら今だな」と強く思うようになりました。たぶん、あと一年、いや半年でも経ったら、この会社は大きく変わってしまう。当事者としてギフティのサービスを成長させて、その先でメンバーとどんな景色が見えるのかを知りたい。いま、ここにいないのはもったいない──。

その想いを鈴木に伝え、4月からBizDevとして入社できないか相談すると、一度は誘いを断ったにもかかわらず、「いいよ」と即答してもらえまして。内定していた会社に申し訳なさもありましたが、丁重に謝罪してお断りし、ギフティに残ることになったんです。

人生で一番悩みましたね、あのときは。でも、ギフティに来ると決断してよかったです。初期フェーズで加わったからこそ、与えられる機会の絶対量が大きかったと実感しています。

変化に対応できる“しなやかな強さ”を持つ人が向いている

──入社して3年半が経ちましたが、篠塚さんが今後ギフティで実現したいことを教えてください。

『giftee for Business』はこれまで指数関数的に成長してきましたが、それはeギフトの市場自体が成長フェーズだったからです。このままではいずれ伸び率は頭打ちになるので、僕はそれを仕組みの力で伸ばしたいと思っています。単にプロダクトを重ねただけのミルフィーユのような事業構造ではなく、各プロダクトが有機的に連動し、掛け算になる仕組みを、どうつくるか。新しい事業を開拓しつつも、既存事業を仕組みの力で深める「深化と探索」に挑戦したいですね。

その先に、企業がお客様個人のことを想ってeギフトを贈り、関係性を深めていける世界をつくりたいです。個人間のギフトは、贈る相手への想いが込められていると思いますが、企業とお客様の間に、その意識はまだ希薄だと感じています。お客様が本当にほしいものを知ったうえでeギフトを活用すれば、お客様ともっと良い関係性が築ける可能性があると思うんです。

ギフティには何社か競合が存在しますが、僕らはeギフト発行手数料の値引き競争のようなことはしたくありません。企業とお客様との本質的な関係構築を手伝う“コンセプト”で選ばれる、強いプロダクトをつくりたいですね。

──今後ギフティのビジネスを伸ばしていくため、どんな人に仲間になってほしいですか?

事業づくりに関しては、僕がそうだからなんですけど、何事にも好奇心がある人と働きたいです。サービスを提供する業界の幅が広く、一日に5業界のお客様を回る日もあるくらいですから。ギフティのeギフトプラットフォームを活かせば、展開できる新規事業の可能性は無限大です。eギフトと自分を掛け算して、1が生まれるのか、億が生まれるのかは、発想やキャパシティ次第。だからこそ、自分の可能性を決めていない、まだ何者にもなれる人こそが活躍できる環境だと思いますね。

性格面では、あまりガツガツしていない人が合っているかもしれません。ギフティのメンバーは、声を大にしてやりたいことを叫んだりはしないけれども、話すと情熱が伝わってくる人が多いです。いわば、心の中で“青い炎”を静かに燃やしているといいますか。

また、変化に対応できる力も求められます。ギフティはまだまだカオスなフェーズ。決まっていないことはたくさんあるし、1ヶ月後経つと方針が大きく変わることも珍しくありません。僕はよく「合掌造り」を例にとって説明するのですが、合掌造りは雪の重みに耐えるため、あえて屋根を固定していないんですよ。雪が降ったら、屋根をしならせて建物を守るんです。カオスな環境だからこそ、そうしたしなやかな強さが必要だと思います。

(取材・文:一本麻衣、撮影: 高橋団、編集:小池真幸