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|ギフティの人

ブランドとは、会社の人格──Chief Creative Officerがたどった、「ギフティらしい」ブランディングの軌跡

「キモチが循環する社会へ」をミッションに、eギフト事業を展開し、人と人、人と企業、人とまちを繋ぐギフティ。オフィスに足を踏み入れれば、コーポレートカラーであるコーラルを基調としたエントランス、ところどころ緑が配置されたフリースペース、壁面にアートが掛けられた会議室など、オープンでクリエイティブな空間が広がっています。

「ギフティらしさ」を表現するのは、このようなオフィス空間だけではありません。会社を主体とした対外的なコミュニケーション全般、たとえばサービスやプロダクト、SNSなどを利用したキャンペーン、PR、社外の人とのやり取りなども同様です。言葉の使い方や資料に使用されるテキストや写真、色使いまで、イメージを損なわないようガイドラインが定められるなど、細部まで考え抜かれています。

このようなデザイン面での指針の取り決め、またギフティ全体のブランディングを担っているのが、2019年にChief Creative Officer(以下、CCO)として参画した長谷川踏太さん。

イギリスの国立大学でアートを学んだのち、クリエイティブ・ディレクターとしてソニーやナイキなど名だたるグローバル企業の案件を手掛け、テクノロジーやアート、ビジネスの最先端領域を横断しながら、デザインの可能性を追求してきた人物です。

就任時、ギフティのブランディングには多くの余白があったと話す長谷川さん。どのような経緯でギフティブランドをつくり、確立してきたのか、そもそも企業活動におけるブランディングとはどのような意味を持つのか、インタビューを通じてお話を聞きました。

〈プロフィール 長谷川 踏太(はせがわ とうた)〉

1997年英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)修士課程修了。ソニー株式会社デザインセンター、ソニーCSLインタラクションラボ勤務などを経て、その後ロンドンに拠点を置くクリエイティブ集団TOMATOに所属。2011年から2019年9月までワイデン+ケネディトウキョウのエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務める。2019年には、ギフティにCCOとしてジョイン。

「なぜ会社を作ったのか」そこからブランディングが始まる。

──長谷川さんは、普段どのようなことをやられているのですか。

クリエイティブ本部という部署の本部長、またCCOという立場で会社を見ています。ギフティがつくるプロダクトやサービス、マーケティング素材のビジュアルなどデザイン全般を見たり、UXやUIの視点から意見を言ったり、自分自身も、映像やテキスト含めいろいろ制作したりと、さまざまで。

細かいところだと、社員からプレゼン資料について「○○と伝えたいんだけど、△△という表記になってしまう。なにかいいコピーはありませんか」と相談を受けたりもする。一方で、ボードメンバーとデザイン面の今後の方向性を決める、といった上流の仕事もあり、幅広くやらせていただいています。

企業活動におけるブランディングというのはとても重要で、それが出来ているか否かで大きな違いが出る。同じ企業が主体となって行うコミュニケーションが、たとえばサービスごとに違ったりすると、ちぐはぐな印象を受けますし、ファンが付きづらいところもあります。

「HRのときはすごいソフトだけど、戦略的な話ではハード」といったようだと、どこか信用できない感じもする。ブランドが確立されていないと、実利の面での勝負になることが多く、結果的に価格競争に引き込まれてしまいます。どんなに高くても買ってもらえるものというのは、つまりブランド力があるということですよね。

だからしっかりとブランディングをやっていきたいし、それが社員に伝わるように細かく言うこともある。たとえばギフティの取り組みである「新入社員大学」のように、新たに入ったメンバーに、ギフティのブランディングがどういうものか、なにを気をつけ、どのように表現していくべきか、ということを説明する機会も設けてもらっています。

──そもそも企業にとって、また長谷川さんにとって「ブランド」とはどういうものなのでしょうか。ギフティのブランディングをどのようにやってきたか、経緯も合わせてお聞かせください。

まずブランディングには、2つの作業があります。1つはブランドを定義する作業。もう1つは、それを世に広めるという作業。一般的に語られる「ブランディング」は、後者のイメージが強いように思われますが、まずは前者の「定義」をしっかりやっていく必要があります。

そこで「ブランドとはなにか」という話になるのですが、言うなればひとつの人格なんです。会社を人とすると、その人格が、ブランドそのものと言える。ブランドを円で考えると、まず中心に核のようなものがある。それは「なぜその会社が存在しているか」「なにを信じているか」ということ。

たとえば「お金がすべてだ」と信じている会社があったのなら、それは当然作るもの、施策やプロダクトは利益重視なものになりますし、逆に「経済活動も大事だけど、従業員の幸せが一番大事」という会社であれば、どうやったら社員が楽しく快適に仕事ができるか、と考えることになる。

ギフティの場合は「キモチが循環する社会へ」というミッションがその核で、そこからコーポレートカラーもロゴもデザインも語り口も生まれてくるし、当然PR、HR、to C、to B事業といった各セクションのやることにも反映されてくる。

もう少し踏み込んで言うと、「核」というのは会社やボードメンバーの哲学で、さらにその周囲には人格がまとっている性格、「ブランドパーソナリティ」と呼ばれる領域が存在します。なにかを決めたり、つくったりする際には、基本的にこのブランドパーソナリティの部分に立ち返って、いろいろ考えていくという感じです。

注)「ブランディング」を図で表したもの。中心には核となるミッションがあり、その周囲をブランドパーソナリティが囲う。すべての対外的コミュニケーションはこの円から生まれる。

注)「ブランディング」を図で表したもの。中心には核となるミッションがあり、その周囲をブランドパーソナリティが囲う。すべての対外的コミュニケーションはこの円から生まれる。

逆に捉えると、「キモチが循環する社会へ」が哲学なのであれば、必ずしもeギフトを事業とする必要はない、ということになります。

気持ちの循環というのは、困っている人がいたら助けてあげたり、企業がお客さまによりよいサービスを提供できることをサポートしてあげたり、といったことなので、実際にはいろいろな事業のかたちが考えられる。ブランドの核というのは、それだけ深く、すべての芯になるものなんです。

2019年に就任した際には、バリューや行動指針、ロゴなどはあったのですが、まだブランディングというものは、しっかりとされておらず、ボードメンバーと話しながら「なぜこの会社を作ったのか」というところを掘り下げていきました。

その人たちには当たり前すぎて、特別にそのことを思っていない、でも共通していること、というのがある。それを見つける、掘り出していく、というのがブランディングの最初の作業でした。そのようにしてブランドの核を捉えていって、突き詰めることでブランドパーソナリティが明確になり、ガイドラインを作る。そうした一連が、ブランディングということになります。

求められるのは変化に柔軟な人。ギフティのバリューは「運と縁と勘」

──ブランディングの重要性を社内で認知させていくというのもまた、難しそうですね。そのあたり、ギフティメンバーへの浸透はどうですか。

ガイドラインを読み込んでもらい、しっかりと自身に落とし込んでくれている人が多いと思います。研修の甲斐もあり、対外的にコミュニケーションを取る際、多くのメンバーがこのブランドというものを意識してくれていると感じます。

そもそも、ブランドの核である「キモチが循環する社会へ」に共感して入っている人がほとんどで、利益率が高いから、将来安泰だから、という理由で働いている人は少ない印象です。人生の多くの時間を割く仕事というものを通じて、地球や社会になにか良いことをしていきたい、そう考えている人にとって、ギフティブランドは比較的近いところにあるのではないでしょうか。

もちろん、ブランドというのはあくまで会社の人格なので、社員ひとりひとりの個性はあっていいし、むしろ尊重されるべきだと思います。みなさんライフステージも異なりますし。ブランドというのは、あくまで会社として振る舞う際に念頭に置いておくべきことで、ゴールに向かってどのようなアプローチをしていくか、それは個人やチームで考えていけばいいと思います。

──今後、長谷川さんはどのようなことに挑戦していきたいですか。また、どのようなメンバーと一緒に働きたいですか。

ギフティは現在さまざまなサービスを買収し、どんどん組織が大きくなっているところで、今後は海外事業も増えていく予定ですし、別の会社が傘下になることも出てきます。そういう中でギフティのブランドはどうなっていくか、そこを考えていくのが大事になると思っていまして。

ブランドのコアは変えずにどのように合わせていくか、あるいはサービスやプロダクトごとに完全に別のものにしていくのか、整理の仕方の問題ですが、CCOとして考えていく必要があると。

そうしながらも、やはり「ギフティらしい」というイメージを損なわないよう、会社が主体となるコミュニケーション全般について、デザインやブランドの面からしっかりと見守っていきたい。

たとえば「クリックするだけで全員もらえるような書き方がされているけど、実際には抽選」「~円以上使わないと適用されないけど、そこの注意書きがされていない」といったものは、ギフティのブランドに合わない。こうしたコミュニケーションについてもいままでどおり、メンバーにしっかりと説明し、また相談に乗ったりもしていきたい。

ギフティを取り巻く環境が変わっていく中で、これからさまざまな新しい人と働けるのも楽しみです。「キモチが循環する社会へ」に共感していることは言うまでもなく、変化が多い中でそのことを楽しめる人、柔軟で臨機応変に動ける人がいい。

ギフティのバリューのひとつに、「運と縁と勘」というものがあります。ものごとを決めるとき、利益や損得だけでなく、理屈で割り切れないものもちゃんと重視する、という意味合いで、そういう考えを持っている人と一緒に働きたいと思っています。

(取材・文・撮影・編集:清水 翔太)