eギフトを通じた接点づくりで、地域の活性化を図る。「街の魅力を伝える」ギフティの新規事業とは
自治体や地域企業などに「e街プラットフォーム」を提供し、地域活性化をデジタル面からサポートしているリージョナルコミュニティ(以下、RC)事業部。e街ギフトや旅先納税など、ギフティの持つデジタルソリューションによって、地域それぞれが抱える多様な課題と向き合います。
その一員として全国を飛び回っている、入社2年目の宮外和輝さん。地域とのつながりについて「事業の期間が終わればサービスも終わる」ではなく、「長く付き合っていける、中長期的なものにしたい」と話します。
主力となる旅先納税サービスでは、昨年5自治体の導入だったのが、今年に入り約25自治体にまで増えるなど、全国で広がりを見せている「e街プラットフォーム」。地域の活性化を進めるRC事業部の展望とは、また自身が仕事をするうえで意識をしていることなどについて、インタビューの中で語ってもらいました。
〈プロフィール 宮外 和輝(みやがい かずき)
京都大学経済学部卒業、京都大学大学院経営管理教育部修了後、2014年にリクルートに入社。リクナビやSPIなどのメインサービスに営業として携わり、その後、営業企画、プロダクト企画などに従事。2020年11月にギフティに入社し、RC事業部の一員として、北海道及び関西以西(沖縄を除く)を担当。現在、京都支社に配属。
地域の持つ“個性”を、eギフトを介して伝えていく
──宮外さんは、どのような業務を担当されているのでしょうか。
RC事業部の一員として、「e街プラットフォーム」というサービスをメインに扱っています。地域通貨や商品券、クーポン、チケットなどを電子化してSaaSで提供する「e街ギフト」、ふるさと納税の返礼品としてeギフトが手に入る「旅先納税」などを総称したもので、地域の実情やニーズ、抱えている課題などに合わせ、これを提供していくのが主な仕事になります。
とくに、後者の「旅先納税」は注目を集めていて。寄附した数ヶ月後にお肉がもらえる、といったような従来のふるさと納税とは異なり、寄附したらリアルタイムに、その場ですぐに使えるe街ギフトが手に入るという仕組みでして。旅行に訪れた人が旅先で寄附をして、それで得られたe街ギフトで、ちょっといいご飯食べるとか、ちょっといい宿に泊まるとか、そうやってお得に旅を楽しめるものになっています。
このようにして、地域に特化したサービスを提供することで、お金を地域内で循環させて、経済の活性化を図ることができる。さらに旅行客、住民、街、自治体と、サービスを介して、さまざまな接点が生まれ、人と人のコミュニケーションも活発になります。
僕たちRC事業部の役割は、自治体や地元企業、地域のプレイヤーなどが、住民や旅行者に「こういった行動をとってもらいたい」と思っているところに、ギフトを添えるというもの。言うなれば、ギフトを通じた接点づくりです。
──まさに、ギフティがミッションとして掲げる「キモチの循環を促進することで、よりよい関係でつながった社会をつくる」を体現しているかたちなんですね。
はい。それをとても近い距離で実感できるのが、この部署のいいところかもしれません。やってみて思ったのですが、地域とeギフトの相性って、とても良いんですよね。
全国的に使えるサービスというのは、首都圏に集中しがちで、やっぱり画一的になりやすい。それに対し、地域というのは、知れば知るほどそれぞれ文化が異なっていて、そういった個性をいかに打ち出していけるかが、地域でビジネスを行う際の肝になってくる。
eギフトというのは、そのどちらにも対応できる。スターバックスのデジタルギフトのように全国的なものも扱えるし、旅先納税のように地域に特化したものもつくれる。
その旅先納税も、たとえば農産物がたくさん売られている道の駅がある地域と、温泉街が二つ三つあってそれを売りとしている地域では、全然訴求していくポイントが異なります。自治体が公式LINEを持っていたら「友達登録して、地域で使えるe街ギフトをもらえる」とキャンペーンを打ったり。eギフトを媒介とすれば、いろいろと柔軟にできます。
「1対1」から「多対多」へ。「社会の最小単位は、やっぱり人」
──eギフトだからこそ、地域の実情に合わせていけると。そのように、個別に対応していくためには、やはりその地域を知る必要があると思うのですが、実際に地域の方と話したりするのでしょうか。その際に、意識したり、工夫したりしていることはありますか。
月に数回は出張をしていて、現地の住民、自治体職員、地元企業の方々に話を聞く、というのは常にやっています。やっぱりメールや電話でやりとりするより、直接行くほうが、いろいろと話してくれるんです。
地方の方って、熱い気持ちを持った人が多い印象で。地域に対する想いみたいなものも、具体的ではっきりしている。その場所で生まれ育って、現在も住まれているという人も多くて、たとえば「街のお店を元気にしたい」という一言を取っても、その「お店」が具体的にイメージされている。そういったひとつひとつの想いに、僕たちが持っているデジタルソリューションを、乗っけていくと。
その際に重要になるのが、なにを本当は求めているのか、ちゃんと知ること。熱い想いに対し、しっかり共感しつつも、こちら側はある程度冷静でいる必要がある。僕はもともと、どちらかというと俯瞰的にものを見たり、整理をしたり、順序立てたりインデックス化したり、といったことが強みなので、それが活きていると感じます。
地域の方々の、まだ言語化できていない部分を探りながら、具体的に受け止めていく。そうすると、その土地特有の歴史や背景、思考のかたちのようなものに行き着いて、よりこちらのサービスのかたちも具体的になっていく。実情や個性に、合わせられるようになっていくんですね。
──熱い想いにそのまま熱く返すのではなく、しっかり共感しつつも、まずは冷静に受け止めると。
もうひとつ大事なのが、なるべく多くの人と話すということです。担当しているエリアのひとつに北海道があって、月に2、3回は訪れるのですが、そこでいろんなコミュニティ、場所に顔を出してきました。
そうすると、たとえばニセコで旅先納税の関係で一緒に仕事をした人と、札幌の旅行代理店でばったり会ったりとか、偶然の出会いみたいなものが生まれてくる。そういうことを重ねていくうちに、「あ、この方とこの方は知り合いで、この地方にはこういうネットワークがあるんだ」と、地域の関係性みたいなものが立体的に立ち上がってくるんですよね。
やっぱり、社会の最小単位って、結局は人で。1対1でつながっていた関係が、多対多の関係になって、その土地の歴史や地域の人々の性格みたいなものが見えてくる。人から人へと紹介していただけることも増えて、それこそがギフティが掲げる「キモチを循環させる社会」なのかな、と思うことがあります。
いま会っている人も、またどこかで会うかもしれない。いま案件につながらなくても、違うかたちでいつか一緒に仕事をするかもしれない。そういう前提で、向き合っています。
1回限りで終わらない。中長期的につながっていける仕組みづくりを
──RC事業部のそのような熱心な取り組みもあり、着々と「e街プラットフォーム」が浸透しているんですね。旅先納税の導入先も、前年の5自治体から、今年には25自治体になったとか。
はい、ありがたいことに。たとえば大きく見積もって、来年には50、再来年に100自治体といったようになったら、全国で1900ある自治体の5%に浸透してることになる。でも、本当はここからが重要だと思っています。
「e街プラットフォーム」が目指してるのは、事業期間が終了したらサービス提供も終わるといった一過性のものではなく、その地域にしっかり根ざして、長い目で見て活性化させられるような仕組みです。
こういった中長期的な目線は、RC事業部にかかわらず、ギフティの多くのセクション、メンバーが心掛けていることだと思います。とくにRC事業部では、相手が地域だったり街だったりするので、このような視点が本当に大事になる。
そのためには、「e街プラットフォーム」でできた加盟店のネットワークや、ノウハウみたいなものを、二次利用、三次利用してもらえる、そういう設計にしていく必要がある。e街ギフトを使える加盟店が、ある地域にすでに存在するとして、自治体の施策でたとえば新たにグルメクーポンを配布するとなったときに、その既存の仕組みを利用してもらう。
そうすることで、自治体にとっても、公募を何ヶ月前に始めて…といったような準備は必要なくなるし、加盟店にとっても、毎回同じシステムなので、マニュアルを読んだり説明会に参加したりといった手間は要らなくなる。そうやって何度もマルチユースされることで、地域に親しんだデジタルツールにしていきたい。
どんどん地域主導になって、二次、三次、と使われて、新しい事業を行うハードルを下げていく。僕たちも自治体も、加盟店も、利用者の方も、簡単に。そういうことが当たり前になっていってほしい。
──最後ですが、今後どんな仲間と一緒に働きたいですか。
いろんなタイプの人と楽しく話せて、多様な価値観を受け入れられる人がいいと思います。とくにRC事業部では、さまざまな地域に出向いて、いろんなコミュニティの方と話すんですね。
当然、年代も生まれ育った土地も違う。歩んできた人生も違う。関わってきた社会がまったく異なるんです。そういった方とコミュニケーションを取って、相手の伝えたいことなどを、真剣に聞いていく。自分の価値観、会社の都合を押し付けず、しっかり傾聴できる人がいいと思います。
あとは、先を見据えながら仕事ができる人ですかね。とくに、地域との関わりであれば、案件が決まるまで半年、1年とかかったりする。そういう中でも、長い目で見られて、どっしりと構えていられる人がいいと思います。
(取材・文・撮影・編集:清水 翔太)