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|ギフティの人

23歳で司法試験に合格し四大法律事務所で働いていた弁護士が、ギフティに入社した理由

<プロフィール:矢吹 邦太郎(やぶき くにたろう)>

岡山県出身。中央大学法学部法律学科在学中の2013年に、司法試験予備試験を合格し、2014年同大学卒業。同年9月に司法試験に合格し、最高裁判所司法研修所にて1年間の司法修習を修了。2015年12月よりアンダーソン・毛利・友常法律事務所にてベンチャーの事業スキーム構築支援やM&A関連業務などに約3年間従事。その後、リーガルテック領域で起業を目指し、事業の作り方を学ぶため2018年10月よりギフティへジョイン。

リーガルテック領域での起業を目指し、事業作りを0から学ぶ


ライター 植本 絵美


──アンダーソン・毛利・友常法律事務所ではどのような仕事を担当していましたか?

主に、法律でビジネスを加速させるようなサポート業務をしていました。

弁護士が民事で関わる仕事とは実際、離婚や相続など暗い局面が多かったりします。僕は、基本的にプラスの側面に関わりたいので、大学生の頃に企業法務という存在を知り、企業が法律で立ち止まることがないようビジネスをサポートしたいと考えるようになりました。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所は、企業にまつわるありとあらゆることをする事務所でしたが、僕が主に担当していたのがベンチャー案件。大きな法律事務所はベンチャー案件が少ないのですが、僕は自分で事業を構築したり、ビジネスを加速させたい時に法律的にどうサポートできるのかということに興味がありました。

例えばAirbnbから発生した民泊問題など、先にビジネスができ上がり、法律が後追いで整備されることがありますよね? ベンチャーの領域だと、法律が整備される前に「これは法律的にいいのですか?」といった相談を受けたりするんです。そういった局面に弁護士として関わりたいと考えるようになって、自分から進んでベンチャー案件を手掛け、特にフィンテック系を多く担当していました。

──なぜ、弁護士をやめてベンチャー企業に転職しようと思ったのですか?

一弁護士として働くよりも、法律業界全体をよくしたいと思ったからです。

ベンチャー案件以外の企業法務は、実務が確立されていることが多く、それをいかに早く回すかであり、そこにクリエイティビティーはないのではと個人的に思うようになりました。

僕にとっては、正解がないなか試行錯誤して組み立てていくベンチャー案件の仕事の方が、とにかく楽しくて。そうこうしているうちに、法律的なサポートに留まらず、自らビジネスにチェレンジしたいと考え始めるようになったわけです。

また、一弁護士として働くよりも、法律業界全体をもっとよくしたいと思うようになったのも理由の一つですね。この業界は労働集約的で、例えば、企業の不正調査に若手の弁護士が20人くらい放り込まれ、不正の証拠を探すためひたすらメールをチェックしたりするんです。地味にやるだけの作業が多くて、それにやりがいを感じる人もいるのでしょうが、もっと弁護士がクリエイティビティーを発揮できるようにすることで、業界全体を盛り上げていきたいと思うようになったんです。

じゃあ、具体的にはどうするのか。リーガルテックの領域でいきなり起業するのか、インハウスの弁護士になって別の経験を積むのかなど、いろいろ考えたんですが、どれもしっくりこない…。起業するにしても、ビジネスについては知識も経験も不足していて、事業の構築の仕方もわからないので、ベンチャーで事業開発の修行をしようと。そんな風にいろいろ考えていた時に、ギフティに出会ったんです。

ロジカルだけでなく、「運」と「縁」と「勘」を大事にするところが決め手

──ベンチャー企業のなかでも、ギフティを選んだのはなぜですか?

弁護士からの転職というのもあって結局、法務との兼任を求める会社が多く、事業開発にフルコミットさせてくれるところはほとんどなくて、転職先の幅はかなり狭かったです。たとえフルコミットさせてもらえたとしても、熱い感じが前面に出ている会社が多く、正直、肌感覚として合わないなと。

そんななか、ギフティのたつやさん(鈴木 達哉)とうな(金 恩雅)さんに面接で会った時、話せばすぐわかる感じってあるじゃないですか、すごくしっくりきました。ロジカルな話をしているけれど、「運」と「縁」と「勘」や、エモーショナルな部分も同時に大事にしている会社だと。弁護士をやっている時には、そんな人に出会ったことはありませんでした。ひたすら物事を冷静かつロジカルに処理していく機械のような仕事だったので、エモーショナルな部分は自分に一番足りない部分だなと。ギフティは、人間味とロジカルな部分が両立している。どちらかだけの会社なら、いくらでもあるんですよね。バランス感覚を大事にしているところが良いなと思いました。

──入社して8ヶ月目だと聞きましたが、具体的に今どのような仕事を担当していますか?

eギフトの導入拡大と、新規事業の2つをインキュベート中です。

2階建ての経営を実現するための新規事業を探索したり、インキュベート中の事業を育成することをミッションとした事業本部に所属されました。しかし、ビジネスの基本も分からないなか、最初から新規事業に関わることは難しいため、最初はCPチームという、eギフトを「生成」し、「流通」「実績管理」までを一環して実施するシステムの導入を支援するチームで、eギフトの基本から学びました。

今は、「Welcome Stamp!」という地域通貨のソリューション事業の汎用化を検討したり、詳しくお伝えできないのですがゼロから検討する新規事業にアサインされるなど、徐々に仕事の幅を広げています。

事業の方向性やフェーズは違うが、根本的な思想は変わらないことを理解することが大事

──既存と事業本部の両立は、大変ではないですか?

ギフティの事業は部分を切り取って見ても本質を理解できなくて、全体を俯瞰して見ないといけない。特にビジネス経験のない僕としては、何もかも初めてのことが多く、キャッチアップには時間がかかり大変でした。

そんななか、既存と新規のどちらの事業を取り組んでいくのはとても大変ですが、とにかく楽しい。僕は基本的に飽き性なので、いろいろやっている方が向いているんです。「Welcome Stamp!」も、ベースにあるのは既存のeGift System、そこから派生しているので、きちんとシステムの成り立ちや背景を理解する必要があります。

クライアントに提案する際も、当然ですが自分が理解できてないと相手には伝わらない。eギフトは、僕らが向き合っている飲食・流通・小売業界の方にとっては得体の知れないもの。僕らのeギフトに対する熱量と、この業界を良くしていくんだと強い思いがないと、人には伝わらないんです。CPチームは数年かけて契約を獲得することも多く、僕もある飲食店に2〜3ヶ月の間、毎週通い、やっと信頼関係を築けたと感じています。さまざまな提案をし、eギフトを理解してもらい導入が決まった時は本当にうれしかったですね。

「マーケットに向き合う」ことの難しさを日々実感

──実際、事業に携わってみてどうですか?

すごく苦しいです。(笑)弁護士の時は、最終的に法律という拠り所があり、「法律ではこうです」と済ませられることがあったんですけど、今はそれがない。クライアントと向き合うなかで拠り所を自分で探し出し、説得するしかなく、逃げ場がない。苦しい反面、その苦しみを味わっていると言いますか、毎日楽しいです。

ギフティは「マーケットと向き合うこと」を大切にしています。僕自身はまだそれを体感していないので、日々それが何なのか探りながら仕事をしており、きちんとした説明になってないかもしれないですが、マーケットに向き合うとは、マーケット全体のあるべき未来像を描いたうえで、意思決定をすることではないでしょうか。短期的に自社の利益を上げるために有効な意思決定が、実は市場全体の衰退を招くこともある。短期ではなく、中長期的に健全な市場形成につながる意思決定をすることが大事だと思います。

自分はまだそこまでは考えられていないので、まず目の前のクライアントに向き合うことを全力で取り組んでいます。

現在、ある会社とのアクセラレーションプログラムを準備中なのですが、先日のミーティングで、自社視点で話していたら、たつやさん(鈴木 達哉)に「これじゃ通らない」と言われ、ハッとしました。「どのようなマーケットと向き合おうとしているのか」「次はどんな一手を打ちたいのか」といった相手の立場に立って提案しないと、芯を捉えた提案はできない。それを常に心掛けるようにしています。

ギフティの柱となる新たな事業をつくりたい

──これからやってみたいことはありますか?

eギフトとは別に、ギフティの新たな柱となるような事業をつくれたらいいなと思います。新規プロジェクが動き始めているのですが、事業をゼロから立ち上げて、それを成長させていくフェーズを経験したくて。そういったクリエーティブな仕事が本当に好きなんです。自分で新しいことを発掘して、何かをつくり上げていくことが自分には向いているんだと思います。逆に、決まった仕事だけをやることは向いてないですね。やっていて楽しいことが向いていることなんだと思います。